◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
その日、俺は茜の家の前で夜遅くまで誰かが帰ってくるのを待っていた。
制服のままで夜の10時過ぎまで家の前で待っていた事に、帰宅した茜のお父さんはとても驚いた様子で、すぐに家にあげてくれた。
感情で後先考えずにやってきた俺だが、なんと切り出していいか言葉を探していた時、お父さんは茜の事を話してくれた。
「茜は今、入院しているんだよ」
意外な言葉に俺は手にしたグラスを落としたことにも気付かなかった。
茜が…入院…?
「茜は、昔から心臓に欠陥があってね。10才まで生きられないと言われていたんだ。
それでも、今日まで何とか持ちこたえてきたのは、あの子の生きたいと願う強い思いがあったからだと思う」
茜のお父さんの声がまるで水中で聞いたいるようにワンワンと耳に響く。
聞こえているのかいないのか自分でも良く分からない。
……イッタイ ナニヲ イッテイルノ…・・