◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
それが茜との最後の日だった。
茜は次の日の夜明けと共にこの世を去った。
俺に挨拶もなしに…
俺に看取られることもなく…
失意の底にいる俺に医者が手術の話を持ってきた。
俺の目は実は失明しているとその時初めて聞かされた。
茜のことで頭がいっぱいだった俺は、自分の事なんて何も考えていなかった。
角膜提供者がいるので出来ればすぐにでも手術をしようと言われ、事態を飲み込むことも、茜の死を受け入れる事も、何も出来ないままに手術の手続きが取られた。