◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
ふと、目を覚ました。
まだ、日が昇るには早い時間。
ずっと前にもこんな事があった。
何の前触れもなく、突然目が覚めた事。
あの時は、そう、茜が会いに来たんだ。
俺はベッドから降り、窓の外を見る。
あの日と同じ明けの明星が輝いている。
やがて空はゆっくりと茜をつれてくるだろう。
そう、あの日と同じように…。
会いに来てくれたんだな、茜。
俺、今日結婚するんだ。
お前と過ごした数ヶ月は、俺にとって人生の宝物だ。
あの頃のような激情はないけれど、穏やかに俺を愛してくれる女性をみつけたよ。
お前のくれた瞳で真っ直ぐに未来を見据えて歩いていくよ。
お前が生きたかった分まで、大切に人生を歩んでいくよ。
新しい今日が始まる。
ゆっくりと空が茜の色に染まり始める。
愛していたよ…茜。
紅く染まる朝焼けが晃の顔を染めていく。
晃、幸せになって…。
茜の声が聞こえた気がした。
*** 旅立ちの朝 Fin ***