◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
静かに鍵を鎖し、ゆっくりとドアノブを捻る。
何度もこうしてドアを開けた1Kのアパート。
ドアを開けるとフワリと彼の部屋の香りが鼻腔を擽り、いつも胸がときめく。
いつも最初に目に飛び込んでくるのは、食器が山積みになったキッチンだけど、今日は綺麗に片付いていた。
珍しいと思いながら、視線を足元に向けてギクリと身体が凍てついた。
彼の靴の隣に、女物の赤い靴。
私の忘れ物ではない。
だけど、その靴には見覚えがあった。
どういうこと…?
嫌いになった訳じゃないって…言ったよね?
私の事はずっと好きだって…
あれは嘘だったの?
リビングのドアのガラス越しに見えたのは、私の親友。
そして彼女の肩を抱き、優しくキスをする彼。
世界から音が消える。
私は呆然として、恋人だった男と親友だった女が抱き合っているのを見つめていた。