◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
全身から力が抜けていく。
目の前が歪み、今にも倒れそうだった。
倒れて、意識を失って、永遠に目覚めたくない。
彼のいない世界で、こんな現実の中で、一人で生きていくなんて…
進むべき道を照らす唯一つの光を、私は永遠に失ってしまったの?
やっと気付いたのに…。
夢も仕事も、全てを捨ててきたのに…。
そんなの…嫌…!
私はキッチンを振り返ると、冷たく銀色に光る刃を手に取った。
窓から射し込む今夜の月明かりが不気味に反射して、血を求めるように刃を赤く染めている。
刃が求めるままに、私はリビングのドアに手を掛けた。