◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
「愛していたのに…」
私の声に振り返る二人。
親友だった女の顔は引き攣り、脈絡の無い言い訳を並べ立てる。
興奮した、いつもより甲高い声が耳障りで、苛立ちを煽られる。
私は女に向かって刃を向け、大きく横に薙いだ。
切っ先が頬を霞め、髪が一房宙を舞った。
ヒステリックな悲鳴と共に、彼から離れて数歩飛びのく。
彼女は自らが逃げることだけに必死で彼を庇おうとはしなかった。
そして彼も…彼女を庇おうとはせず、ただ驚いた顔で私を見つめていた。
そう、それでいい。
あなたは彼女を庇っちゃダメよ。
だってあなたは私のものだもの。
私だけのもの…