◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
彼は呆然として「どうして…?」と呟いた。
ああ、やっぱりそう訊いたわね…。
私はクスリと笑って彼に向き直った。
もう一度話したかったの。
もう一度会いたかったの。
どうしても伝えたかったの。
あなたを心から愛しているって…
あなたと一緒に逝きたいって…
私は彼の胸の中に迷わず飛び込んだ。
鈍く光る刃は鞘を求めるように、彼の胸に沈んでいった。
崩れ落ちる彼の瞳は閉じられることなく私を見つめていた。
彼の時間が止まる最期の瞬間(とき)まで。
ねぇ、あなたの瞳が最期に捉えたのは、悲鳴を上げて泣き叫ぶ裏切り者ではなく、私の幸せな笑顔だったんでしょう?
あなたもこの結末を本当は望んでいたのよね?
だって私、解ったんだもの。
私があなたの胸に飛び込むとき、一瞬両手を広げて私を迎え入れてくれたでしょう?
一緒に逝こうって…
あれはそういう意味だったんでしょう?