◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
どこで狂ってしまったのだろう。
どこから壊れてしまったのだろう。
あの時、私から甘えていたら、何かが変わっていただろうか?
あの時、私が素直に泣いていれば、私を選んでくれていただろうか?
虚しい事だと分かっていても、胸を占めるのは後悔ばかりだった。
やがて小さく息を吐くと、あなたは何かを決意したように顔を上げた。
私を振り返り、小さく深呼吸してから唇を動かす。
……言わないで…
私はその唇を最後のキスで塞いだ。
冷めてしまった私への想いのような、とても冷たい唇。
私の知っている唇が紡ぐのは、優しく甘い愛の言葉だけ。
大好きだったあなたの唇から別れの言葉は聞きたくない。
幸せな記憶を哀しみで染めたくないから、最後の言葉は私が言うわ。