Spiral Love *桜の下でまた逢おう*

「お前のおかげかも」


「へ?なんで?」


「お前さ、前仕事のやりがい、つうかそういうの話してくれたことあったろ?俺、今まで正直さ、実家の仕事から逃げ出すことばかり考えててさ、本当に自分のやりたい事ってあんまり真剣に考えたことなかったのかも、って思ったんだ」


「でも・・・元、お酒の勉強するってヨーロッパに行ったんでしょ?」



「うん。そうなんだよ!結局さ、実家から逃げて、俺あっちですげー楽しかったの。苦労して工夫して美味しいお酒を作るとさ、飲んでくれた人がすげー幸せそうな顔してくれるんだよな。それがすごく嬉しかったこと。思い出したんだ」



「うん・・・」



「だからさ、俺も親父と一緒に酒の仕事やってこう、って思ったんだ」



「じゃぁ・・・元の家に就職ってこと?」



「ま、家みたいな零細企業はそんなバイト雇うお金もないし、俺もまだまだ勉強したいから、とりあえずは、お店で振らせてもらえることになったから」


「バーテンダー、ってやつ?」


「そ」


「似合ってると思うよ、元」


チエの結婚式でグラスにドリンクを注ぐ時の元の楽しそうな顔が思い出された。



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