△の○
小さい頃は新しいお父さんと会うたびに期待に胸を膨らませていたあたしも、成長するにつれてそいつらにも母にも愛想が尽きた。

家には寄り付かなくなり、夜の公園をぶらぶらして時間を過ごしていた(男とよろしくしている母が、帰らぬ子どもを心配して探しにくるなんて事は当然なかった)。

友達でもいれば、悩みを打ち明けたり一緒に遊んだりして孤独を紛らわすこともできたのだろうが、小、中、高とも、友達らしい友達はできなかった。
何故かといわれるとよく分からないのだけど、きっと自分に自信がなかったのだと思う。

皆が当たり前のように持っているモノを、自分は持っていなかったから。

帰るべき家

優しいお母さん

頼れるお父さん

そして何よりも、自分の、居場所。


そうやって常に劣等感を持っていたあたしは、いつもうまく同級生と馴染めずにいた。
でも、大学に入学を期に、変わろうと思った。

友達が欲しかった。

自分の居場所が欲しかった。

一人はもう嫌だった。


でも、上手くなんていかなかった。

どうしたら友達ができるのか、全然分からなかった。
どうやったら好きになってもらえるのか、一緒にいてもらえるのか。
全然分からなかった。
でも、考えてみれば、それは当然だ。
だって、あたしは今までずっと、母親にすら、本当に好かれたことなどないのだから。
あたしは人に愛されない人間だという事は、もうとっくに立証されていた。

せっかく頑張ろうと思ったのに。

全然ダメ。


だからもう嫌になった。





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