△の○
何にもうまくいきやしない。
きっとこれからもそうなんだ。

だから死のうと決めて、適当なビルの屋上にやって来たのだった。
それは逃げだとか、そんな事もうどうだっていい。
もう疲れたんだもん。

ホント、つまんない人生だった。
もっとまともな親の所に生まれていれば、こうはならなかったのかなぁ。
あんな親、どうせあたしが死んでも悲しんだりしないよなぁ。

あーあ。
ホント、つまんない人生だった。

屋上の縁から見渡せる景色をぼんやり眺めた。
ちらほら建っているビルの間で、赤い夕日が沈もうとしていた。
夕日は遠くまで続いていて、きっとあたしの目で捉えられる範囲のそのまた向こうにも、ずっとずっと続いてる。
知らない町の、知らない人達も、同じ夕日を見ているのだろうか・・・。

そんな中の誰か、誰か一人でもいい。

誰か一人でも、あたしを愛してくれる人はいただろうか。


「あーあ」


ぽつりと呟いた途端、ふいに、けれどとても強い感情がこみ上げてきた。

それは、怒り。

あたし、今まで何も楽しい事なんてなかった。
まだ何も、良い事に出会ってないし、良い思いだってしてない。
何でそんなまま、死ななきゃいけないの。









 冗 談 じ ゃ な い!

 





「・・・死ぬ時って、そんな風に笑えるものなの?」



握りこぶしを、夕暮れ空に高く突き上げるあたしに言った人。


それが、ナオだった。






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