△の○
揺れる水面
☆
めずらしく、練習中にぼんやりしてしまった。
おかげでミニゲーム中3点も取られた。
いつもなら全神経を集中し、あの白と黒の玉を目で追っているのに、今日はさっぱりだった。
気がつけば相手オフェンスが目の前まであがってきていて、
思い切り放たれたシュートが俺の左脇を猛スピードで過ぎ去っていた。
一歩も動けぬまま、ボールはネットに収まっていた。
くそっ。
「トラー今日調子悪いじゃん!」
練習後、落ち込む俺の背中を同期の皆森が軽く叩いた。
こいつとは高校からの付き合いで、ずっと一緒にサッカーをしてきた。
気の置けない友達ってやつ。
「んー、ちょっとな」
俺が曖昧に笑うと、皆森はうんうん頷いた。
「分かった、後悔してるんだろ?ミユキちゃんと別れたこと」
「は?」
「そりゃ正直フるにはもったいねぇよなぁ。今からでも遅くない!」
「あのなぁ」
「大丈夫、まだミユキちゃんお前のこと好きらしいから!」
・・・皆森は良い奴なんだが、人の話を聞かないのが玉に傷だ。