△の○



土曜日は一人でいることが多かった。
ナオは決まって土曜日はどこかに出かけている。
トラはシーズン中毎週末試合がある、とかナオから聞いた。

用意された朝食を少々迷ったすえ食べて、自分で入れたコーヒーを飲んだ。
そよそよと窓から風が吹き込んで来て、クリーム色のカーテンを揺らした。
ベランダに干された誰かさんの練習着の向こうには、晴れた空。

ナオは朝起きたらまず一番に窓とカーテンを開ける。
だからあたしはいつでも清清しい空気の流れる部屋で朝を迎えられる。

「俺、朝が一番好き」

ナオはそう言って笑う。
何で、とあたしが訊くと、何も言わずにやっぱり笑った。

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