△の○
「ただいま」

玄関の重たい扉を開いて、あたしはまず靴を確認する。
ナオのサンダルだけがキチンと並んでそこにある。
こんな時、あたしはとても嬉しい。
邪魔なあいつはいないんだ。

「お帰り」

ぱたぱたとスリッパの音を響かせて、
ナオが玄関まで出迎えてくれた。
あたしには到底できないような優しい笑みを浮かべてる。
この瞬間に、あたしは外の世界にいる時のわずらわしい事から解放される。
ほっとして、肩の力が抜ける。
嬉しくて、だから、もう一度言う。

「ただいま。これ、お土産」

大学からの帰り道、コンビ二でプリンを買ってきた。
ナオの好物。

小さなビニール袋にプリンは二つ。
もちろんナオと、あたしの分だ。

「ありがと」

ナオはそれを嬉しそうに受け取った。
でも袋の中を見てちょっと切なそうな顔をした。

リビングの大きいソファで二人並んでプリンを食べる。
シャワーでも浴びたのだろうか。
隣の彼からふんわりと石鹸の匂いがした。

< 2 / 21 >

この作品をシェア

pagetop