△の○
部屋を見渡してみる。

淡いクリーム色で統一された家具。
フローリング。
白と茶色の絶妙なバランス。
大きな窓からは燦々と日がそそぐ。
この部屋はまるでモデルルームのようだ。

誰もが気に入る部屋。

文句のつけようがない、用意された、空間。

それはそれでいいとも思う。

けれどここには、普通の人ならば当然部屋にあふれ出る、
「住人の個性」というものが圧倒的に欠落していた。
インテリアでも観葉植物でも、絵でも本でもCDでもなんでもいい。
「こういうのがこの人は好きなのか」と、思わせる類のものが一切ない。
シンプルが好きであえてこうしている、という人もいるのだろうが、ナオはきっと違う。
少なくともナオが「シンプルにこだわっている」ようには見えない。


この部屋からは、ナオの気配がしない。


ふと不安がよぎって、ソファの上で丸まった。
すべてが嘘に思えて怖かった。

誰もいない部屋。





それでもここがあたしの居場所。
















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