△の○
ガチャリと玄関で音がしてはっとした。
そうだ、今日は月曜日だから部活がないんだ。
こんな事ならナオを早く外に連れ出せばよかった。

「ただいま」

声がして、ナオが玄関に向かったのであたしは唇を噛んだ。

「お帰り」

あたしに言った時と少しも変わらない口調のナオ。
スリッパと裸足の足音がこっちに来る。

「お、アヤちゃんお帰り」

ソファで小さくなるあたしをみつけて、トラは声をかけてきた。
無視。

「あ、俺お土産買ってきた。プリンとアイス、ソーダのシャリシャリのヤツ」

手に持ったコンビニの袋を掲げて見せる。
ふん、とそっぽをむいてやる。
トラはあたしが手に持ったプリンと、
ナオが食べたプリンの容器、
そして空のビニール袋をテーブルで見つけて、
ちょっと笑った。
どういう気持ちなのか読み取れない表情で笑った。

「中入れとくから、ご飯の後食べようぜ」

明るく言って、冷蔵庫に向かう大きな背中。

ソーダのシャリシャリは、あたしの好物だった。




だから嫌いなんだ、こんなヤツ。



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