△の○
「トラ、鼻の頭の皮剥けてるよ」
ご飯の最後の一口を飲み込んで、ナオは俺の顔を覗き込んだ。
黒々とした大きな瞳に僕が映る。
「ん、あぁ。もう日差しきついからな、すぐ焼けるんだ」
鼻の頭をかきながら答える。
これから練習がきつい時期になる。
夕方からとは言え、夏の太陽は俺を真っ黒ゴリラにするには十分な力を持っている。
「痛くないの。化粧水とかなんかつけなくていいの」
ナオが心配そうに言うので、俺はつい嬉しくなって言う。
「男は黒い方がいいっしょ」
どっとテレビから笑い声がしてCMになった。
とたん、アヤちゃんはテレビを消して立ち上がった。
そして俺を一度刺す様に睨んでから、リビングから出て行ってしまった。
言葉には出さなかったけど、俺には彼女の言いたいことがしっかり伝わった。
「オカマの癖に何が『男は』、だ。
このホモ野郎」