△の○

正確に言うと、俺はオカマじゃないしホモでもない。

自分の生まれ持った性を疑ったこともないし、今まで好きになったのも付き合ってきたのも皆女の子だ。
ナオを好きになってしまったからって、俺はバイセクシャルなんだと思う訳でもない。
『自分にはそういう一面もあったのか』とすら認める気にもなれない。

大学の連中とバカみたいな下ネタで盛り上がるし、そういうDVDだって借りる。
巨乳とかだって好きだし、可愛い女の子には自然に目が行く。
いたってフツーの、二十歳の学生だ。
あくまで自称だけど。

とにかく、言い訳やごまかしを抜きにして、
俺は単純に一条直希という人を好きになってしまっただけなのだ。
好きになった奴がたまたま男だっただけ、なんて、言い訳くさいけど。
でもそれ以外に俺の状況を説明するうまい言葉が見当たらない。

アヤちゃんも俺が真性でないことは知っている。
初めて彼女と会って、あっという間に険悪な関係になるまでの間に俺が彼女に伝えられたのはその事だけだった。
今ではもっと他に言うべきことがあったんじゃないかとも思うんだけど、
でもどれも言い訳くさくて口にはできないでいた。

どんなに言葉を交わして取り繕っても、
俺がアヤちゃんにとって変態で邪魔で憎い存在だという事に変わりはない。

ナオに俺を紹介された時の、アヤちゃんの言葉が忘れられない。



「気持ち悪い」




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