アメ玉
「・・・・・・・・・・・・・
5組じゃない。」
健ちゃんは静かにそう言った。
アタシの中で、
何かが割れた。
それはとっても繊細で、
弱くて、大事なもの。
「分かった。ありがと。」
「うん。」
「このこと、
誰にも言わないでね?」
「分かったよ。
・・・・・・ま、
少し経ったら、
言いふらすけど。」
健ちゃんはいたずらに笑って、
電話を切った。
「健ちゃんのバカ・・・。」
フラれたのに、
涙は出なかった。
本当に悲しいときは、
なかなか涙が出ないって
前に父さんが言っていた。
トイレから出て、
部屋に戻った。
アタシの好きなバラードを
イヤホンで聞くと、ポタポタと
涙がこぼれた。
歌の歌詞が、
自分の恋と重なる。
明日は始業式だった。
ちゃんと切り替えられるよう、
今夜はいっぱい泣こう。
そう思った。