二人の虹
「前田さん、引き継ぎ、お願いします」

少々、頭の毛が薄く、小太りした男に向かって言った。

椅子にチョコンと腰掛けていた男が言う。

「ああ、トン、今日はナーンも問題なしだ。出荷伝票、今出てくるからよ。〜喰うなよ」
デスクの上のパソコンのプリンターに手を掛けながら応える。

「山羊じゃありません」

「でも、腹、減ってんだろう。お前、いつも朝飯、喰って来ないんだろう」

「栄養ドリンク、飲んでますよ」

「それじゃあ腹の足しになんねえ。作るの面倒ならせめて、カップラーメンぐらい喰ってこい」

「ハイ、ハイ、自炊嫌ずで申し訳ありませんね」

と、栄養ドリンクをデスクの脇に置いた。

「お、お前、昼飯もそれか〜?」

「いえ、昼飯は自販機の野菜ジュースです」

「カー、情けねえ。俺、帰って飯〜しこたま食べて寝る」

前田克典〜というこの男、夜勤の主任であり、久志に何かと目を掛けてくれる。

プリンターから伝票が出てきた。

「以上!。引き継ぎ終了!」

「ご苦労様でした!。伝票、食べないで我慢します!」

カッとズッこけながら、前田が事務所から出ていった。
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