二人の虹

川村家の面々

秋田市内の川村家では、高校を卒業したばかりの晴美が額に汗滲ませながら、衣類を段ボール箱に詰め込んでいる。

ゆっくりやりなさいな〜と声を掛けたくなる。

「晴美、まだなの、運送屋さん来ちゃうわよ!」

二階の晴美の部屋に、母の恵子の声が聞こえる。

運送屋さん?。
今時?。
引っ越し屋じゃないの?。

「急がせるなら、手伝ってよ!」

甘えちゃいけないよ〜。

「何、言ってんの、いつまでも子供じゃないでしょ、自分の事は自分でやりなさい!」

ホラ〜。

トントンと階段を上がる音がする。

「何なの、この有り様…」

恵子は呆れてしまう。
整理どころか散乱してしまっている。

無理ないって〜引っ越しは始めてなんだから〜。
まあ、晴美だけだけど〜。

「衣類、たたんであげるから箱詰めしなさい」

こういう事は主婦の手慣れた仕事。
でも、大学生になる晴美は意地になっちゃう…。

「いい、自分でやるわよ」

強がりなさんなって〜。

「それよりお父さん呼んでよ、電化製品、重たい〜」

「外で運送屋さん、待ってるわよ」

「ああ、だから引っ越し屋がいいって言ったじゃない、ケチって!」

それなりの事情があるんだよ…。
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