おみやげ
おみやげ
ガー がやがや
すたすたと、早足で歩を進める、人、人、人。これから帰路に付く人々だろうか。それとも、この街のどこかの飲み屋ででも、羽根を休めていく人達だろうか。
人々にとっての忙しない一日は終わろうとしていた。もう時刻は定時をゆうに過ぎ、皆、また明日の朝日が昇るまでのほんの少しの間、自分の時間を手にし、何ものにも追われることなく、のんびりと過ごすことができる筈だった。でも、この街の人々は、朝も、昼も、夜も、その歩調を緩めたりはしない。皆せかせかと足を動かし、小走りのように歩いている。私はそんな光景を、膝に立てかけた腕に頭を任せつつ、ぼんやりと、ただ眺めているのだった。
この街の中心部。駅前ロータリーの中央にぽっかりと浮かんだ小島のようなスペース。その小島に備え付けられた花壇の端に腰掛け、際限なく流れ行く人々と、島の中央に聳え立つ、螺旋を描きつつ空へと向かって高く伸びる謎のモニュメントとを、代わる代わるに視界に納めて、ただただ、時間が過ぎるのを待つ。
ちらりと時計に目をやった。約束の時間は、3分ほどオーバーしていた。
妙に神経質なところのある私は、そんな些細な時間のズレが気になってしまう。時間に遅れた相手を怒っているとか、そういうことではないのだけれど(そんなぴったりに到着することなんてあるわけないし)、分かっていても、いや、分かっているからこそ、どこかそわそわしてしまう。
(このくらいの遅れなら、遅刻になんて入らないよね)
(もしかしたら、思いがけない事情で遅れてしまっているのかも)
(まさか約束を忘れてなんて……って、3分オーバーしただけで何考えてるんだ、私は。失礼だよ)
そんな言葉を、まるで何かに必死になって言い訳をしているように、心の中で自分に言い聞かせている。まったく、おかしな奴だ。