おみやげ
 
「……なにそれ。たばこ?」
 私がそう訊くと、八重ちゃんはうんうんと二度首を縦に振った。事実、それはどこからどうみても普通の紙巻煙草でしかなかった。だけど、煙草が収まっていたBOXタイプのケースのファンシーっぷりは相当のもので、そんな可愛さ満点の箱に煙草がぎっしりと詰まっていたことに、私は少しばかり驚いた。
「なんでたばこ?」
 再度訊ねると、八重ちゃんはふっふっふと不敵な笑みを浮かべた。
『普通のたばこじゃないよ』
「普通じゃないって?」
『呑むと、懐かしい気分になれるたばこ』
 そう言って、八重ちゃんは今までで一番真剣な表情をして私を見詰めた。

 懐かしい気分なんて――

 そんな言葉が口から出かけたが、寸でのところで留まった。これが、八重ちゃん一流のやり方なのだ。どんな意図があるのか今の私には分からないけれど、きっと、それは今までと同じ。自ら中に入ってみるまで、分かることなんて何も無いのだ。
 私は黙って目の前に差し出された一本の煙草を受け取り、口に銜えた。同じように煙草を銜えながら、八重ちゃんが喫茶店で貰えそうなマッチに灯を燈した。
 煙草の先端をマッチの炎にくべらすと、私は息を、ゆっくりと、吸い込んだ







 







 
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