おみやげ
え?
最初に頭に浮かんだのは、そんな、言葉ともなんとも取れないようなものだった。
え? 駅は?
八重ちゃんは?
何が、どうなってるの?
私はついさっきまで、駅前で八重ちゃんと会話を交わしていたはずだ。いや、ついさっきとか、そういう次元の問題じゃない。ついさっきどころか、今の今まで、いや、今現在もそうしていなければおかしいのだ。私は家に帰った覚えなんてない。言ってみれば、そう、まるで瞬間移動でもさせられた気分だ。そうして、私は今、自分の部屋で涙を流している。いったい、何がどうなっているのか。
私はまだぽかんとしながらも、立ち上がって部屋を見回した。自分の部屋を見回して何がどうなるわけでもないが、私の心の「何故?」は、その疑問に答えてもらう為の、何らかの行動を必要としていた。
そうして私は、見つかるはずのない答えの鍵を見つけてしまった。
机が、あった。
随分前に使わなくなって捨てた筈の、学習机が。
なんで? という新しい疑問が頭の隅に生まれつつも、私は、何故捨てたはずの机が突然部屋に出現したのか、という問いの答えを探そうとはしなかった。それよりも、今自分の置かれた状況に対する疑問の大きさのが勝った。私はふらふらと学習机に近づいていった。