ピンチヒッター
「あ、そうだ!
あんた手ェ抜いてたでしょ!」

あたしはビシッ!と指さした

「は?んなわけねーだろ!」

「嘘だ!
だってピンチになるまで速い球投げなかったじゃん!」

あの日、雰囲気の変わった桜庭亮を思い出す

「・・・・・・ふ~ん、お前いい目してるじゃん」

桜庭亮はニヤッと笑った

「あれは作戦だよ」

「作戦?」

「コントロールを重視して、
徹底的に低めに投げたんだ。

球は遅くなるけど、
ホームランは防げるからな」

「で、ピンチになったら速い球投げるの?」

「そういうこと。
急に速くなったら対応しづらいだろ?」

ふ~ん、そういうことだったのか

「利点はそれだけじゃないぜ。
三振ばっかじゃ守備練習にならないが、このやり方だとバットに当たるから練習になるんだ。

練習試合なんだから、有効に使わないとな」

「な、なるほど~」

そんな風に考えてたんだ

手を抜いてるとか言っちゃったよ



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