ガジュマルの木の下で
眠る前に居間に降りて来ると、喜志ちゃんが黒い猫を抱いていた。
猫は目をとじて、体を喜志ちゃんに預けていた。

「ショーコ?早くねなさい」
まるでお母さんのように喜志ちゃんが顔を向ける。

「うん…寝る前に水が飲みたくて。」

「明日はお休みでしょ?何するの?」

「特にに予定は無いよ。ゴロゴロしてると思う。」

「ふぅん」と言いながらも喜志の目は、猫を愛しそうに見つめていた。




聞きたい。聞きたい。
この人のことが気になる。
「あのさ、喜志ちゃん」

「なあに?」

「喜志ちゃんのことが知りたい。」


何度か瞬きをした後
喜志ちゃんはこう答えた。
「もうすぐお母さん」



私はそれ以上聞けなかった。聞きたいと思わなかった。
だって喜志ちゃんが
あまりにも幸せそうにわらうから。
目尻の皺も、緩んだ口元も

全て
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