ガジュマルの木の下で

クジラを探しに

仕事の疲れなのか
夜更かしをし過ぎたのか…

仕事の時は朝4時に起きている。毎日の習慣になれば、目覚ましが無くても起きられるはず。そんなふうに思ってはいたけれど

目が覚めた時には9時を回っていた。


なんとも言えない甘い香りで脳が背伸びをしているようだった。

少しの期待をしつつ
急な階段を降りていく。

居間の戸をあけると、やはり甘い香りが部屋中に充満していた。思わず深呼吸して、全身でこのぞくぞくするような甘さを感じた。

台所には喜志がいた。

祥子は台所に立っている彼女を始めて見た気がした。

「おはよーございます」

「あらショーコ。もう起きたの?」

え?

「まだおやつ出来上がってないよ」

と言いながら生地でベタベタになったボウルやヘラを洗っていく。

「ショーコ、焼けるまで待ってて」


祥子がオーブンの中を覗き込むと
型の中で段々と膨らむケーキが見えた。

甘い香りを吐き出すオーブンは、決して新しくも綺麗でも無いけれど、この家の幸せの象徴の様に思えた。

くらくらする。


「ショーコ。」

呼ばれて顔を向ければ
当たり前の様に喜志が笑う

「朝ごはん食べなさい」

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