ガジュマルの木の下で
それより数ヶ月前のこと

実家から離れたリゾートホテルに就職が決まった私に、お母さんはある条件をつけた。
「会社の寮に入ること」

勿論、私もそのつもりで居たのだから、何も問題は無かった。

だけど数日してから
お母さんは言った。

お母さんの友達の妹さん夫婦が向こうに住んでて、部屋を貸してるらしい。そこに住むなら寮じゃなくてもいいとのこと。


会社の寮か
人の家か

どちらにしても水回りは共同で、個室を貸して貰える。


決め手は食事だった。
家でお世話になるなら、寮より少し家賃は高いけど、食事の世話をしてくれるらしい。


…仕事先ではお昼ご飯しかでないし…



私は
お母さんの友達の
妹さん夫婦の家でお世話になることになった。

色気より食い気だ。

しばらくして夫婦から手紙と写真が送られてきた。
手紙にはどんな荷物が必要か、どこのバス停で降りるか、家にはネコがいることや近くのお店のことなどが、男性の字でぎっしり書かれていた。
そして私に貸してくれる部屋の写真。

部屋の中よりも窓の外に目が行った。
だってそこには
建物が写って無かったから。
私の部屋の窓を開けても、すぐ前に人の家がある
入ってくるのはセミの声と熱風くらい。

写真の中の大きな窓を見ていたら、まだ入ったことも無い癖に
この部屋が好き

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