ガジュマルの木の下で
仕事から帰ると、誰もいない。
静かで
どこかに出掛けたのかな
と、心細かった
しばらく部屋の掃除をしながら帰りを待ってみたけれど
誰も帰ってこない。
その時 電話がなった
急いで一階に降りて受話器を取る。
「もしもし」
「あ、祥子ちゃん?良かった。帰って来てたんね。」
それは隣の家のおばさんからの電話だった。
彼女は良くこの家にも訪れる。喜志ちゃんも彼女に気を許し、甘える光景を何度も見てきた。

「あの…誰も帰ってこなくて…」

「とりあえず家にいらっしゃい」

優しい口調ではあったけど
どこか緊迫した彼女の声に
私は慌てて彼女の家へと向かった。玄関を出るとき
いつもはいているスニーカーでは無くて
喜志ちゃんとおそろいの島ぞうりをはいたのは
きっと偶然では無い

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