ガジュマルの木の下で
喜志ちゃんと呼ばれた女の子は旦那さんに
「けん、歯みがき粉無い。」
と話をし始めた。

呆気に取られてる私に
けんさんはもう一度
「奥さんの喜志ちゃん。これでもこいつ27だから」
と付け足した。

日本人離れした顔立ち
栗色の髪
深い緑の目
身長は私よりだいぶ低い。体付きが薄い。
あれ…お腹だけぷくっとしてる。

「赤ちゃん…いるんですか?」
と尋ねる祥子に喜志は
お腹をポンと触って笑ってみせた。


あぁ 確かにお母さんの顔をしている。


喜志は祥子の横に黙って座り込み
DVDのスイッチを入れた。

なかなか映らないのか
リモコンを触り倒した挙げ句
祥子に「やって」と手渡した。初めて触る人の家の機械に戸惑いながらも
祥子はDVDを再生した。

洋画が流れ、気が付くとベッドシーンだ。
何だか恥ずかしく思った祥子がテレビから気を逸らすとハンバーグの良い匂いがした。

「今日のハンバーグ。チーズのるかなぁ?」

声のする方に顔をやると、喜志がニマッと笑っていた。
いたずらっ子のような表情に、ついついつられて笑い
二人で ゲラゲラ笑っていると
台所から声がした

「手伝わない奴にはチーズ乗せねぇぞー!」

と。
慌てて私は台所へ向かい(別にチーズが欲しかった訳では無い)

喜志ちゃんは
「じゃあ喜志、応援する」
と言ってDVDを切って食卓についた。
「アホか」
と、けんさんに叱られる中で飄々とご飯が出て来るのを待ち続ける喜志ちゃんは、ある意味とても頑固だ。

結局、3人とものハンバーグにチーズが盛られ無事に食事を始めたけれど
喜志ちゃんは 自分のハンバーグだけ小さい!
と、ふくれていた

…子供みたい。


可愛らしい人だなぁと
1日で好きになった。

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