REGRET ―忘れられない人―
「俺がそばにいても、いい?」
「あり……がと……」
泣くなよ。
花帆の涙には弱いんだから、俺。
ハンカチなんて持ってないから、俺はシャツの袖を伸ばし、涙を拭いた。
花帆は、話し始めた。
過去のこと。
日差しが強くなったり弱くなったりして、太陽が雲に隠れると肌寒くなった。
そっと愛花ちゃんにタオルをかける花帆を見て、また惚れ直したりして。
「会社の上司だったの」
意外な言葉に俺は耳を疑った。
勝手な想像だけど、頼りない感じの男だと思っていた。
砂場で遊ぶ幼稚園くらいの子供が目に入る。
「子供ができたかも知れないって話したときに……わかったんだ。彼には奥さんがいたの」
またまた驚いて、俺は何も言えずに、自分の手の甲を見つめていた。