REGRET ―忘れられない人―
俺は、どういうわけか、髪を黒に染めた。
兄貴が持っていた黒髪に戻す毛染めを使った。
兄貴は高校の文化祭の劇で不良の役をやるために、髪を金髪に染めていた。
用意していた毛染めを勝手に使ったのに、兄貴は怒らなかった。
きっと兄貴も花帆と同じ気持ちだったんだ。
俺が親の反対を押し切って髪を染め、夜遊びを覚えたのは中学1年の夏休みだった。
髪を染めても、夜遊びをしても兄貴は俺の味方だった。
でも、やっぱり黒く染めたこと・・・・・・兄貴は嬉しかったんだと思う。
真っ黒ではないが、黒くなった俺の髪を見て兄貴は、安心したような表情をした。
『ワックスで固めて立ててみれば?』なんて言いながら、俺の髪をくしゃっとした。