REGRET ―忘れられない人―
しばらく俺は、教官室の前の窓から校庭を眺めていた。
一番遅くまで練習していた陸上部の部活が終わった。
「うわ!!!何やってんだよ、お前!!」
腕まくりして、暑そうにノートで顔を仰ぎながら階段を上ってきた兄貴は、俺を見つけて大きな声を出した。
「よぉ。元気?」
兄貴の仕事している姿を見るっていう経験もなかなかない。
「何しに来たんだ?」
兄貴は持っていたノートで俺の頭をポンと叩いて、教官室の中へと入れてくれた。
「兄貴、今のって誰にでもやるのか?」
「何が?」
冷蔵庫からオレンジジュースを出し、コップに注ぐ兄貴。
「何がって、今みたいにノートで頭叩いたり!!」
「あぁ。俺の癖かもな」
兄貴はわかってない。
「ああいうの、だめだって!!女の子って絶対キュンって来るから」
俺は花帆と会っている間から、のどがからからだった。
渡されたオレンジジュースを一気に飲んだ。
「お前、直みたいなこと言うんだな。誠人も俺にキュンって来たのかぁ?」
俺は兄貴に、ばーかって言って、兄貴のデスクの椅子に腰掛けた。