REGRET ―忘れられない人―
兄貴は、誰もいなくなった真っ暗な校庭を眺めていた。
振り向いた兄貴は、少し笑ってこう言った。
「俺が泣くなんて信じられないだろ?」
そして、また遠い目をして、窓の外に視線を移した。
「今ならわかる。俺も好きな人がいるから……」
昨日の俺ならわからなかったかも知れない。
今日の俺はわかる。
俺は今日、花帆と話していて、何度か涙が溢れたんだ。
大好きな人との別れ……
兄貴が泣いたと聞いて、俺は兄貴の気持ちがよくわかった。
兄貴には子供がいる。
俺も詳しくは聞いていないけど、別れた彼女が妊娠していて、彼女は次の男がいて……
みたいな、結構複雑な感じ。
そのことを直さんに話すとき、兄貴ってどんな気持ちだったんだろう。
俺だったら怖くて言えねぇな。