Dear…ex
テレビも何もついていない静まりきった部屋を、私はぺたぺたと歩き、そのまま風呂場へと向かった。
家族団欒の居間なんて必要ない。
必要なのは、風呂と寝床、それだけだ。
慣れた手つきで付け睫を外し、クレンジングを馴染ませていく。
年々濃くなる化粧は、本来の私を覆い隠すようにも感じられた。
ドロドロとオイルに溶け込んでいくファンデーションやマスカラが、やがて混ざり合って濁った色になったとき
何となく親しみさえ沸いた。
と、同時にどこか恨めしくも思った。
この表現し難い心のもやや濁りも、こうして一緒に浮き出てしまえばいいのに、と。