Dear…ex
「あんた、誰よ」
2度目の問いかけでようやく聞き耳を持ってくれた。
「……あぁ、捲き込んで悪かったな。でも悪かったついでに、あいつが何か言ったら“お尻触られたの!”て言ってくれねぇ?」
「は?何で私が──」
「お!起きたぜ。なかなかタフだねぇ、けっこう本気でやったのに」
と、言い終わる前に彼は私を乱暴に離して飛び出して行った。
混んだclub内、私達の周りだけ小さくスペースが空いて
キャーキャー悲鳴を上げる女がいたり
物珍しそうに横目でチラチラと見るヤツがいたり
私だって被害者なのに、「あの子のお尻触ったから彼氏が…」なんて声が聞こえて、当事者ど真ん中扱いだ。
ふぅ、と小さくため息をついてポリポリと頭を掻いた。
逃げたくても逃げられない。
鍵は何処かへ行ってしまった。