COLORS【橙】パッション☆オレンジ
次の日の朝。

俺は蜜柑に会ったら「ありがとう」を言おうと思っていた。


「おはよう」
リビングに行くとそこには父さんと母さんしかいなかった。

「希、おはよう」

「あれ?蜜柑は?」

「蜜柑なら用事があるからって先に学校行くって言ってたわよ」

「……そう」

「はいっ!これ」

「?」

「蜜柑が作ったのよ!希ちゃんに渡してて言ってたわ」

「……弁当……!」

俺は昨日の会話を思い出した。

あいつ!!

「俺……行かなきゃ」

蜜柑に会いたい。

「希!朝食は……おいっ」
俺は父さんの言葉も聞かずに飛び出した。



無我夢中で走っていた。
蜜柑にはたくさん『ありがとう』を言っても足りない。
俺はお前を失いたくない……。

それは──、

キョウダイとしてではなく……。


「蜜柑っ!」

「……希」

最寄駅の改札を通ろうとしていた彼女を見つけて、俺は叫んだ。


好きになっちゃいけない。

分かっているのに──。


彼女は改札を通るのを止め、こちらへ静かに寄ってきた。

「昨日はありがとう、あと弁当も」

「……別にそんな畏まらなくていいよ、それにお弁当はついでだったから」

「俺……蜜柑のこと」

「お願い、それ以上は言わないで」

「でも」

「ダメ!ダメだよ、操さんに悪いよ。希の彼女は操さんなんでしょ!」

「蜜柑が好きだ」

俺は彼女を抱き寄せると、その瞳は涙で溢れていた。
まるで……それが全てを語っているように。

「……ごめん、希の気持ちには応えられない」
そっと耳元で囁くその言葉が、俺の心に強く突き刺さる。

──蜜柑。

ゆっくりと離れた彼女は振り返ることなく、そのまま駅の改札に向かっていった。
< 11 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop