COLORS【橙】パッション☆オレンジ
オレンジのン
 「彼女……居たんだ」
教室に行く前に入学の手続きで事務室へ引率した帰りだった。

「……うん……っていうかその──」

「大丈夫、私は希のこと好きになったりなんてことは、絶対にないからっ!」

「蜜柑……」

そんな風に改めて宣言されると、心の中にぽっかり穴が空いたみたいでやるせない。

この感覚は一体何なのだろう。



俺は二年A組。キョウダイで同じクラスになるハズもなく、蜜柑は隣のクラスB組となった。

今は六月。
季節外れの『転校生』とはこのことを言うのかもしれない。そんな言葉が頭ん中を掠めた。

俺の予想通り、蜜柑はすぐに注目の的となった。


「ねー知ってる?B組にかわいい子が来たんだって?」

「ちょっと見に行こうか?」

「そうだね~行こ行こ」


てな具合に。
う~ん……あの人だかり……ここは動物園かっての。
ったく……。

俺はため息をつくとB組までは行かず自分の教室に戻ることにした。


「すっかり人気ものだね、彼女」
操とは同じクラスで席も隣だったりする。

「まぁ……な」

「ちょっと気になる?」

「ばーか。そんなわけないだろ、お前も蜜柑のこと敵視し過ぎだっての。今朝のアレなんだよ……心配しなくても俺はお前の傍に居るから、安心しろ」

「うん……」

俺には操が居る。
だから……蜜柑とはただのキョウダイ。
それ以上の関係にはなっちゃいけないし、なるハズもない。

それだけは確かだ。

なのに――。
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