オカルト・カルテ

特権

…なんで、こんなことになってるんだっけ?




「おい、人間がいるぞ・・・」



「まさか、魔世界の門を通ってきたのか?」



「けどあけるには悪魔の力が必要だろ?」



周りでひそひそと悪魔たちが私たちを見て
ささやきあう。



隣の成満さんは平然と腕を組んで立っているが
表情は目の前の一回り大きな悪魔を見据えていて。



……ハァ。





数十分前のこと。



あの洞穴から見事に悪魔城へと入れたのだけど
その際に兵士?らしき悪魔に見つかってしまい。


そして通されたのがこの大広間で、
今幹部らしき悪魔が私たちをじっと見ていた。



「……成満さん、私たちどうなるんでしょうか」



「…さあな。

とりあえず、静かにしていろ。
妙な動きをしなければ奴らも手出しはしないだろう」



「…はい」



こんなときでも冷静なんだな・・・。



私はさっきから緊張して、
怖くて不安でたまらないのに。



そんな成満さんを少しうらやましく思って
少し離れたところにいるレラジェさんたちを見た。



「ベリアス殿!どうか彼等を解放してくだされ!」



「…承諾できんな。
人間が2人も魔界に来たとあっては、
一度王に報告せねばならんだろう」




「…ではせめて、ストラスとシュトリの居場所だけでも
教えてもらえぬか?

詩織殿は彼等を助けに来たのだ」




その言葉に少し目を開いて、私に目を向ける。



「……そうか。
ストラスの契約者というのは、そなたであったか…」



ふぅ、と納得したようなため息。




「……お願いします。
2人は私をかばって、ここにいるんです。


私はどうなってもかまいません。
その代わり、2人を解放してください」



今しかないと思った。



私がここまで来た目的を成し遂げられなければ、
レラジェさんや成満さんが協力してくれた意味がない。




2人を助けられるのは、私しかいない。



< 112 / 129 >

この作品をシェア

pagetop