雨夜の月
待ちに待った金曜日。

この日は、朝から着替えや化粧品を、紙袋に入れて登校した。

1日の全てが長く、教室の時計ばかり見ては、過ぎる時間に溜め息をついた。


最後のチャイムが鳴り、誰よりも早く学校を出て、千里の家へ向かった。


「ただいまぁ」


千里が靴を脱いで、私もお邪魔した。


「お邪魔します!!」


奥から千里のお母さんが出てきて、


「いらっしゃい!!何もないから気を遣わないでね」


と笑顔で迎えてくれた。


「美月!!こっち!!」


階段から千里が呼んで、部屋へと案内された。


千里の部屋は性格の表れか、サッパリしていて黒を基調に整理されている。


「シンプルねぇ」

「ごちゃごちゃが嫌いなの」


持ってきた私服に着替え、外食の為に駅前まで出ることになった。

今日は、美味しいパスタの店に連れて行ってくれるとかで、千里に導かれ歩く。


駅前まで来て、切符を買うわけでもなく、ロータリーで周囲を見渡す千里。


「バスか何かに乗るの?」

「んー…乗らないよ…嵐来るんだぁ…」

「は?嘘でしょ?」

「此処で待ち合わせしてんのよ」


マジですかッ!?

いつの間にそんなことになっていたのか…。

突然、緊張してきた。


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