雨夜の月
ロータリーの柵に、二人で並んで腰を掛けて嵐が来るのを待った。

千里の地元だけあって、時々、千里の友達が通る。

私は紹介される度、千里がどれだけ友達の多い子なのかを実感していた。


暫く待っていると、嵐が自転車に乗ってやって来た。


「すまんッ!!着る服、悩んだ」

「遅いよ!!」


千里に言われて、嵐はまた謝った。


そのまま私を見て、

「私服、可愛いじゃん」

と言って笑った。



恥ずかしい。



とにかく、恥ずかしい。



そして、異常に緊張している。


三人で、パスタの店まで歩く。

私は、嬉しさと照れが混ざって上手く笑えないでいた。


「お前、大人しいな」

「え?」

突然振られた会話に、言葉を探して焦った。


「てか、髪、色落としたんだな」

「うん…染めるつもりだったから、暗くしてみた」

「その方が似合ってるよ」

「嵐に言われたからじゃないからね」


強気の発言。


「そぉか」


実は、慌てて染めた髪だった。

今日、嵐と会うとは思ってなかったけれど、また偶然を期待していたのは事実。


パスタ屋さんに着いて、三人で別々のパスタを注文した。


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