流れ星との約束
「あっ!」
 
 
 光の声で遥斗は目が覚めた。どうやら眠っていたらしいが、五歳の子供にとって、夜の9時というのは真夜中に等しい。本来なら、彼の母親である佳美が起きることを許す時間ではない。だが、光がどうしても流れ星を見たいと言ったので、彼女の母親と話し合って許可したのだ。
 
 
「どうしたの? そんな大声出して……」
 
「流れ星だよ。流れ星! ほら、また!」
 
 
 急に興奮してきたのか、彼女はブツブツと早口言葉を呟いていた。それを聞きながら、遥斗は流れ星を見たら何か約束事をしなければいけない。と誰かから聞いたのを思いだした。
 
 約束……
 
 必死に考えてみたが、今の彼に約束できそうなことなんて無かった。
 
 
「遥斗は何も言わないの?」
 
 
 光が不思議そうな顔をして聞いてきた。
 
 それもそうだろう。わざわざこんな真夜中まで起きてまで流れ星を見たのに、何も約束事を言わないなんて不思議に決まっている。
 
 必死に彼が考えると、一つの単語を思いだした。彼は慌ててその単語を口にした。
 
 
「コウシエン……コウシエンに行きます!」
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