流れ星との約束
1.約束
「遥斗。まだ?」
 
 
 窓の外から聞こえる、光の声を敢えて無視しながら、神山遥斗は着替えを急いだ。一階からは、母親が自分を急かしている声が聞こえるが、それも無視する。やっと着替え終わると荷物を持って下に降り、リビングに置いてあるパンを掴んで家を出た。
 
 入学式だが、母親は来ない。母子家庭であるため、学費を稼ぐために、残念ながら仕事を頑張ってもらわねばならない。
 
 
「遅い。入学式くらい早く行こうとか思わへんの?」
 
「思わんな。そんなに言うならお前1人で行けばいいやろ」
 
「うわっ、せっかく迎えにきてあげてんのにそんなこと言うんや」
 
 
 高校生になるというのに、毎朝一緒に登校するのもどうかと遥斗は思ったが、これ以上反抗すると光の機嫌が悪くなる。とりあえずそれは避けたかった。
 
 謝った後、持ってきたパンを食べながら歩き始めた。光もあまり怒ってないのか、隣に来て並んで歩いている。
 
 
「あっ。ヨシムネや」
 
 
 十字路にさしかかったところで光が言った。遥斗がその言葉に反応して右を見ると、彼女の言うとおり1人の男が歩いてきていた。
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