流れ星との約束
「遥斗、いいか?」
 
 
 円陣が解かれた後、宗が遥斗の前にやってきた。遥斗は、飲んでいたスポーツドリンクを口から離して、宗を見る。
 
 
「当たり前のことやけど、この試合は全員が出る。せやけど遥斗はまだ全然分からんやろ?」
 
「ああ」
 
「やから、代走で使う。分かるな? ピンチランナーや。今お前が出てもアピールの面では逆効果やし……」
 
「せやろな。初心者丸出しになると思う」
 
 
 苦笑いしながら遥斗は答える。野球部に入ったとはいえ、何回かキャッチボールをしたくらいで、ほとんどが練習の手伝いだ。そんな状態では、投球も打撃もままならないだろう。
 
 すると、宗が再び口を開いた。
 
 
「1つだけ、この試合を見る中でやってもらいたいことがある」
 
「何? スコアは書けへんで」
 
「安心しろ。違う……。ランナーのリードの仕方を見といてほしい。形をずっと見て、遥斗のリードがぎこちなくないようにしてほしい」
 
「なるほど、分かった。努力はする」
 
 
 遥斗が笑顔を作って答えたのとほとんど同時に、審判を務める西村監督がグラウンドに現れた。
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