流れ星との約束
 克也の手から離れたボールは、ホームベースの少し手前でワンバウンドした。ショートバウンドとなったボールを、吉田が膝を地面につき、プロテクターで止める。
 
 当然ながら西村の手は挙がらない。
 
 
「ボール!」
 
「……止めたか」
 
 
 予想外の出来事に、克也は思わず呟いた。吉田の反射神経を確認するために、わざとワンバウンドするボールを投げたのだが、まさか体を使って止めるとは思わなかった。
 
 今はランナーもいないためボールが後ろに逸れても、それほど問題はない。しかし吉田はわざわざ体を使ってボールを止めた。
 
――気に食わないな……
 
 立ち上がり、ユニフォームでボールについた砂を拭っている吉田を見ながら、克也は思った。
 
 
「緊張せんと、落ち着いてな」
 
 
 拭き終わったのか、吉田がそう言いながらボールを克也に投げ返した。まるで吉田にコントロールされているような感じがし、克也は思わず唾を呑み込んだ。
 
 こんなことではダメだ。吉田のリードは無視する、と心の中で言い聞かせる。
 
 こういう感覚は初めてだ。中学時代の捕手とは気が合った。どんな捕手でも、彼にはかなわないだろう。それは目の前にいる吉田も同じだ。
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