流れ星との約束
　打球が自分の所へ飛んできたのに気づいた千葉啓太は、慌てて左へ走り出した。
　
　なんとかギリギリで打球の正面に回り込み、グローブを下ろす。しかし、ボールは彼のグローブに入らなかった。
　
　弾いた。彼がそう気づいたときには、すぐに周りから声が聞こえてきた。
　
　
「啓太！　後ろや！」
　
　
　一番近くにいる亮司の声が聞こえる。それを聞いた啓太は、慌てて後ろを見た。幸い、ボールは数メートル先にある。
　
　急いでそれを取りに行き、グローブは使わずに右手でそのまま拾う。
　
　
「千尾、投げろ！」
　
　
　今度は安藤の声か。元々１塁へ投げるつもりだった啓太は、すぐにファーストの亮司へ体を向けて送球した。
　
　ボールは亮司の胸からは少し逸れたが、彼が動かずに捕れる範囲だった。
　
　
「アウト！」
　
　
　西村のジャッジが聞こえる。本当に間一髪だった。１塁ベースを駆け抜けた岸本が、悔しそうにしている。
　
　硬球で生まれて初めて受けた生の打球。緊張と経験不足により弾いてしまったが、アウトを取れたことは喜べることだった。
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表紙・目次

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