カウントダウン
歌詞とは裏腹な軽快なリズムが刻み終えられた後に残ったのは
ドラムの余韻と、歓声と鳥肌。
あたしは泣かないように下唇を噛んだ。
夏樹が好きだと思ってたのに絢が好きだと思ったり。
でも結局夏樹の事もやっぱり好きで。
このバンドフェスティバルに来て良かったのは、初心を思い出した事。
夏樹が好きで夏樹と少しでも一緒にいたくて、少しでも近づきたくて。
それでこの大学に入ったのに。
なのにあたしは結局夏樹の何も知らないまま、1人で勝手に幕を下ろそうとしてた。
だから今日ここに来て、ちゃんと夏樹と向き合わなきゃ、って思えた。
たった、1度しかないんだから。
この日は。 この時は。 この瞬間は。
だったら、何も考えないで進めばいいんだ。