Princessの掟
それから数時間、喋りながら食事をしてお開きになった。
去り際に五十嵐拓磨が思いがけないことを言ってきた。
「あなたに本気で好きな人がいないのならこの婚約を進めたいと思ってます。百合亜さん。では。」
私は断るつもりでいた。
でも、彼の笑顔を見るとそのセリフが喉から出てこなくなってしまう。
彼はきっと私のことを考えて言ってくれたのだろう。
彼はいい人だと思う。
でも……
なんか違うっていうか。
それは彼をまだ知らないから?
私は、どうしたらいいのかわからなかった。
そして、彼とのお見合いが今までの生活を狂わすことになるなんて私は気づくはずもなかった。