「…ここ‥‥だよね」
渚は都内の中でも1番大きな病院、絹頭中央病院。
さっき、電話を貰って届けに来たんだけど…

「広いよっ…迷子になりそう」

渚は苦笑いをしつつ、紙に書き留めた425病室を探し出す。



渚ははっきり言うと、病院が好きではない。
病室に来るたび、あの嫌な光景が鮮明に蘇って来るから。


「ここ…」


425病院…前橋彩さん?

渚は二回ドアを叩く。
すると微かだが、「どうぞ」と言う少女の声が聞こえた。

「失礼しますっ…」
花束を片手に持ち替え中に入ると、前橋彩が白に統一されたベッドに寝ていた。

彩は渚が入ってきたのを確認すると、体を起こして、イスを差し出し


「どうぞ、座ってください。」


と笑顔で話し掛ける。



ドキッ…



渚は心が高鳴ったのが分かった。


大人びた顔立ち、肩までのびた漆黒の髪、見とれてしまうほど美しい笑顔。


「あの…大丈夫ですか?」
立ったままの渚を不思議に思ったのか、不安そうに渚を見つめる彩。



 
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