あたしの執事
「…っ」

「え!何泣いてんの、千秋。マズいんなら吐いていいよ」


あたしが今どれだけ自分勝手なのかよく分かった。好きな人に迷惑なんか、死んでもかけたくない。

ふとした瞬間、額に感じた感触。


「涙止める魔法。結構効くでしょ?」


また…どうして…そんなことされたら…


「こんな時にキスなんかすんなぁ…反則だろーが」

「相変わらず素直じゃないね。でも止まったでしょ?涙」


当たり前だ。あんなことされたら、誰もが泣くことをやめてしまうだろう。


「…玲の料理は美味しくなくないよ。あたしが勝手に泣いただけ」

「なんで」

「…自分が…偽善者だからかな」


事実だからこそ胸に突き刺さる自分の言葉。俯くあたしを玲は静かに抱きしめた。
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